今年は6月から連日猛暑となりましたが、この時期になると太陽光発電に関わる方は台風被害が気になられるかと思います。

読売新聞オンライン(2023年5月14日付)によると『山の傾斜地に 太陽光発電施設が相次いで設置され、豪雨災害などによるパネル崩落が懸念されている。読売新聞の調査では、全国の太陽光施設のうち、「土砂災害警戒区域」 内に立地し、近くに住宅などが存在するものが230か所以上、確認された。』とあります。

では、台風被害(自然災害)の状況を見て行きましょう。

主な被害要因

台風による被害と言うと豪雨と強風が頭に浮かびますが、どの様な被害が発生するのでしょう。

豪雨被害

  1. 豪雨により上部斜面で崩壊が発生し、下部斜面の発電所を直撃した。
  2. 豪雨により敷地内の地盤が侵食され、のり面崩壊・陥没が発生した。
  3. 豪雨により谷埋盛土された急斜面の地盤が崩壊した。被害を防止するためには、地盤の評価、排水設備の設計・施工を適切に実施する必要がある。       

    強風被害

    強風により斜面に設置した太陽電池モジュールや架台が飛散した。被害を防止するためには、傾斜地における基礎・架台の風荷重計算、施工を適切に実施する必要がある。

<引用元:NEDO傾斜地設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2021 年版>https://www.nedo.go.jp/content/100939010.pdf

2019年台風19号

台風による太陽光発電所の被害と言うと2019年の台風19号を思い出される方が多いのではないでしょうか。状況を確認してみましょう。

電気事業法第106条の第3条に基づき各産業保安監督部へ提出された事故報告は18件有りましたが内16件(88.8%)が河川氾濫によるものでした。

<引用元:経済産業省令和元年台風19号における太陽電池発電設備被害状況一覧https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/newenergy_hatsuden_wg/pdf/019_s03_01.pdf

天災?人災?

河川氾濫による被害のあった16件の内9件(56.2%)が国土交通省のハザードマップで浸水被害想定区域内でした。

数値流体解析

浸水や土砂災害はある程度予測可能かと思いますし、経産省やNEDO等からも太陽光発電施設設置に関しガイドラインも示されていますので比較的回避し易いのではないでしょうか。しかし、パネル飛散の原因になる乱流(風の流れ)に関する予測はなかなか難しそうです。ラージエディシミュレーション(LES)を用いた数値解析を行うとある程度予測可能なようですが、設置場所だけでなく周辺の地形や地表面の植物粗度を数キロ四方わたり調べ取り込み計算するようです。(ビル風被害防止に開発されたキャノピーモデルも利用)

<参考資料:NEDO「実在地形における風速増加に関する数値流体解析」https://www.nedo.go.jp/content/100960270.pdf >

<参考資料:日本流体力学会「1 次元植物キャノピーモデルを用いた大気境界層モデルの構築とその精度の検討」https://www2.nagare.or.jp/jscfd/cfds15/papers/E01/E01-2.pdf >

まとめ

太陽光発電所の新設やセカンダリー購入の際は経産省やNEDOのガイドライン等を参照・確認し間違わない選択をしたいですね。但し確認項目は多岐にわたり専門業者でないとなかなか判断は大変だと思います。

新設に関しては信頼できるEPCとの相談、セカンダリー購入も信頼できるEPCや評価会社との相談が必要かと思います。

被害の早期発見も重要ですのでO&Mも信頼出来る業者に頼みたいですね。

天災による不測の事態を完全に回避する事は難しいですが、太陽光ファンドは財務局の監督のもと太陽光発電施設の選定・モニタリングに関して厳しい規定を設けていますので安全性は高いと考えられます。