太陽光発電所を施工されてから10年を超える方も居られると思いますが、そろそろ耐用年数が気になられる時期でしょうか。

太陽光発電は米国の発明家チャールズ・フリッツ(1850年―1903年)により半導体素材セレンを素材にセルを開発してから140年以上が経ちますが、現在のセルの原型であるシリコンp/n接合セルの開発は1941年に米国のラッセル・オールが開発したと言われています。
日本においては1950年代以降各社が開発を手掛け、実用化1号は1965年東北電力信夫山無線中継所の設置と言われています。(諸説あり)

太陽光パネルの耐用年数は設置場所や設置方法、メーカー、O&M等によりまちまちでは有りますが、状況を見ていきましょう。

太陽光発電パネル耐用年数

減価償却:17年間と定められています。
メーカー保証例:機器保証10~15年、出力保証20~25年
NEDO:公開したロードマップ(PV2030+)では、モジュール寿命目標(技術開発の完了)は 2017年に20年、2025年に30年、(40年技術)となっています。
JPEA:HPで機器の寿命に関する質問に「太陽電池モジュールは20年以上」と回答しています。

出力低下の測定結果

著名な工学博士の論文には「1990年から1992年にかけて日本の代表的メーカー4社によって製造された結晶系太陽電池モジュールを10年経過前後測定した結果、10年後の出力低下の分布を求めて平均4.7%低下していることを明らかにした。20年で平均9.4%,30年で平均14.1%の出力低下が予想される。」と記述されています。
<引用元:太陽電池モジュール信頼性および強誘電体結晶表示素子の研究( 内容の要旨(Summary) )>http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/bitstream/20.500.12099/33557/1/eo_0064.pdf
予想通りであれば、30年以上は使えそうですね。
しかし、米国PVEL(第3者評価機関)の2020年の報告によると、一般的な太陽光パネルの半数以上が稼働後30年で交換が必要になると言われています。

 

<引用元:京セラHP トピックス>

長期稼働太陽光発電所の状況

30年以上前に設置された太陽光発電所は少ないのですが、データが公表されている太陽光発電所の状況を見てみましょう。

壷阪寺(奈良県)1983年設置

2011年(29年目)の測定結果は40枚中2枚に20%以上の出力低下がみとめられたものの9割以上のモジュールは10%以下に収まっており、40枚の平均出力低下率は6.43%である。
<引用元:マテリアルライフ学会誌・太陽光モジュール耐久性の現状>

シャープでは、壷阪寺などの太陽光パネルに使われている、セルやバックシート、封止材など、主要な4つの部材について材料ごとの劣化状況も調べた。その結果、それぞれが最も劣化が激しい場合、20年の稼働で出力が13%低下する可能性があるというシミュレーション結果になった。「20年で13%の出力低下は最悪の場合で、実際のフィールドでの実績では20年稼働で5~6%の出力低下に留まっている。壷阪寺の28年で6.43%という出力低下もそれを示している」<引用元:日経XTECH>

出力低下率はシミュレーションよりも実績はかなり低く収まっているようですね。

佐倉事業所(千葉県)1984年設置

1984年から稼働している京セラ佐倉事業所の太陽光パネル は、36年目の2021年の時点で17%の劣化に留まり、現在も 現役で発電し続けています。


<引用元:京セラHP トピックス>

こちらも36年目で出力低下率が17%ですから、シミュレーションやメーカーの出力保証より低下率は低いと言えそうです。

まとめ

太陽光パネルの実際の出力低下率はシミュレーションよりはかなり低く30年経過しても80%以上の出力は維持される可能性が高そうです。但し、太陽光パネルはセルだけで出来ている訳ではありません。封止材等約10種類の部材を使っています。使用されている部材や組み立ての技術・精度、O&M等も耐用年数に影響を与えます。
シミュレーションより出力低下率が低い事は太陽光発電所所有者及び太陽光ファンド出資者の利益を押し上げそうですね。